直感性をもたらすアフォーダンスとシグニファイア
ユーザーがUIを理解し、意図した行動を取ることが容易であり、目的を達成するための障害が少ないことが求められます。この目的の達成に、アフォーダンスとシグニファイアという人間の認知に対するアプローチが重要であることはこちらの記事で述べました。
これらの要素を適切に組み合わせることで、ユーザーが直感的にUIを操作できるようなデザインが実現されます。UIデザイナーは、ユーザーの視点を重視し、ユーザーがどのようにUIを利用し、どのような期待を持つかを考慮してデザインします。
この際に、アフォーダンスとシグニファイアを適切に理解していることが大切です。
UIデザインのトレンド
UIデザインのトレンドは時間とともに変化してきました。以下に、過去のUIデザインのトレンドの一部をいくつか挙げてみましょう。
スキューモーフィズム|Skeuomorphism|2000年代 – 2010年代初頭
スキューモーフィズムは、リアルな物体や素材の外観や挙動をデジタルインターフェースに取り入れるトレンドでした。リアルなテクスチャや影、光の効果を用いて、物理的な要素に近いデザインを作成するアプローチが一般的でした。
フラットデザイン|Flat Design|2010年代初頭 – 現在
フラットデザインは、シンプルで平面的な要素を特徴とするトレンドです。スキューモーフィズムのデザインに見られた影や立体感を極力排除し、色や形状によるシンプルなデザインが主流となりました。このアプローチは、シンプルな操作性とモバイルデバイスに適したデザインを提供しました。
マテリアルデザイン|Material Design|2010年代中盤 – 現在
Googleが提唱したマテリアルデザインは、現実的な物質の挙動をシミュレートし、深度や動きを強調するスタイルです。影や動的なアニメーション、レイヤーの概念を導入して、情報の階層化と洗練されたユーザーエクスペリエンスを提供しました。
ニューモーフィズム|Neumorphism|2020年代前半 – 現在
ニューモーフィズムは、スキューモーフィズムとフラットデザインを組み合わせたデザインアプローチです。要素が浮かび上がったような見た目を持ちながらも、平面的なスタイルを保ちます。リアルな立体感を持つデザインでありながら、モダンな印象を与えます。
ダークモード|Dark Mode|2010年代末 – 現在
ダークモードは、上記の3つとはちょっと違いますがトレンドとして取り上げておきます。
画面を暗くするデザイントレンドで、視覚的な疲労を軽減し、夜間の使用を向上させることを目的としています。多くのアプリやウェブサイトで採用され、ユーザーに選択肢を提供することが一般的です。
直感的なUIはどこへ向かう?
デザイントレンドは、ハードウェアやテクノロジーの進化に影響を受けることがあり、また逆にデザインの新しいアプローチがテクノロジーの発展を推進することもあります。UIデザインは、デバイスの能力や制約、ユーザーの期待に合わせて適切に進化する必要があります。
フラットデザイン登場の背景
例えば、フラットデザインは、モバイルデバイスの台頭やタッチスクリーンの普及に合わせて登場しました。フラットデザインは、小さな画面上での情報の分かりやすさや操作性を高めるためのアプローチとして受け入れられました。
一方で、アフォーダンス的な直感性に関しては、デザインのアプローチとユーザーのリテラシーの間にバランスが求められます。
フラットデザイン以降、デザインはシンプルさやミニマルな美しさを重視する傾向があり、スキューモーフィズム的なアフォーダンスは薄れています。
そのため、デザインにおける情報伝達や操作のわかりやすさを犠牲にすることなく、ユーザーが意図した通りにインタラクションを行えるよう配慮する必要があります。
ユーザーのリテラシーがデザインに影響を与える
ユーザーのリテラシーや習慣もデザインに影響を与える要因です。例えば、慣習や学習により、特定の記号が意味づけされて理解されていくことが挙げられます。
他にも、ユーザーが特定のデザインパターンや操作方法に慣れている場合、それに合わせたアプローチを取ることで、直感的であると感じられるように操作性を向上させることができることです。
要するに、デザインは常にユーザーのニーズとテクノロジーの変化に合わせて適応する必要があり、アフォーダンス的な直感性と美的な要素の両方をバランス良く組み合わせることが重要だということです。
こうして考えると、美しさというのはUIの進化だと捉えることができるように思います。
直感的なUIは、その操作の「系」が熟成されていくにつれて美しさを纏うようになり、「系」の外に居る者には近寄りがたい存在になっていくのかもしれません。
美しさは体験価値を高める
実際のところ、デザインが美しさを持つことは、ユーザーエクスペリエンスの一部として重要です。美しさはユーザーに肯定感や満足感を提供し、プロダクトやサービスへの愛着を深めます。ただし、美的な要素がユーザビリティや機能性を犠牲にしてはならないことも重要です。
また、UIが操作の「系」を熟成し、その結果として美しさを備えることは、ユーザビリティと共にデザインの進化の必然です。操作やインタラクションの方法が確立され、ユーザーが使い慣れてくると、それに合わせた美的要素が形成されていくのでしょう。
大変興味深いプロセスです。
道具に美しさを宿すのは人の性か
ユーザーインターフェース(UI)デザインは、ユーザーとの相互作用の中で進化し、熟成していくプロセスを持っています。
これは、ツールや道具の進化のパターンとも類似しています。歴史的に、ツールや道具は使われるうちに最適化され、機能的で効果的なデザインが熟成されてきました。
同様に、UIデザインもユーザーのフィードバックと実際の使用に基づいて洗練され、美しさや効果的なインタラクションを持つものに変化していくのです。
このプロセスは、UIデザインがユーザー中心のアプローチを取ることの一環です。ユーザーが製品やサービスを使用する際に得るフィードバックやデータを収集し、それを元にデザインを改善していくことで、より使いやすく、満足度の高い体験が実現されます。そして、そのプロセスを通じて、美的要素も熟成されていくという事なのでしょう。