カスタマージャーニーとは
カスタマージャーニーとは、顧客が製品やサービスを知り、購入し、利用する過程を指します。顧客は多くのステップやタッチポイントを通じて、その経験を構築しています。カスタマージャーニーは、顧客の視点からその行動や感情を理解し、ブランドとの関係性を形成するために用いられます。これにより、顧客のニーズや要求に合わせた戦略を立てることが可能となります。
カスタマージャーニーマップとは
カスタマージャーニーマップは、カスタマージャーニーを図やグラフで可視化したものです。これにより、顧客が製品やサービスを利用する過程を段階的に捉え、各ステップやタッチポイントを理解することができます。カスタマージャーニーマップは、ステップごとの顧客の感情や行動、ニーズや課題を反映することで、顧客体験の全体像を明らかにします。これにより、ビジネスは顧客の視点を理解し、より効果的な戦略や改善策を導き出すことができるのです。
カスタマージャーニーマップの構成要素
一般的なカスタマージャーニーマップは以下の要素で構成されます。
フェーズ(ステップ)とタッチポイント
顧客が製品やサービスを利用する一連のステップや、その途中で接触するタッチポイント(ウェブサイト、ソーシャルメディア、店舗など)を示します。これにより、顧客の体験がどのように進行し、どのチャネルを通じて関わりを持つかが明確になります。
思考・行動と感情
顧客の思考や行動、感情も考慮に入れます。顧客が各ステップでどのような感情を抱き、どのような行動を起こすかを示すことで、顧客の心理的側面や意思決定の要因を理解する手助けとなります。
ニーズや課題
顧客が各ステップで抱えるニーズや課題も捉えます。これにより、どの部分で顧客に価値を提供できるか、どの課題を解決する必要があるかを特定することが可能です。
インサイトと改善の方向性
顧客の体験に関する洞察を得るための道具として利用されます。得られたデータや情報をもとに、顧客体験の改善や戦略の調整を行う方向性を見つけることができます。
これらをマッピングすることで、購買行動の全体像を把握しやすくなります。
フェーズ | 認知 | 検討 | 購入 | 仕様 | 評価 |
---|---|---|---|---|---|
思考 | 洋服が欲しい | 自分に合った洋服を見つけたい | 自分に合った洋服を見つけたい | 商品を使ってみたい | 商品を買った感想を共有したい |
行動 | インターネットで洋服を検索する | 口コミやレビューをチェックする | 商品ページを比較検討する | 商品を受け取る | 商品を評価する |
タッチポイント | インターネット検索 | 口コミサイト | 商品ページ | 商品到着 | レビュー投稿 |
課題 | 自分に合った洋服を見つけにくい | 失敗したくない | 早く欲しい | 届いた商品が気に入るか不安 | 商品の価格が高い |
感情 | ワクワク、期待 | 不安、迷い | 期待 | 楽しみ | 満足、不満 |
重要性を増すカスタマージャーニー
カスタマージャーニーのコンセプトは、2000年代初頭から徐々に提唱されてきました。特定の個人や企業によるこのコンセプトの正確な提唱者は明確ではないものの、顧客中心のマーケティングや顧客体験向上の考え方が進化し、それに関連する概念として浮上してきました。
以下に、カスタマージャーニーのコンセプトがどのように展開してきたかの主なマイルストーンを示します。
2000年代初頭
顧客中心のマーケティングや顧客体験向上の考え方が注目され始めました。この時期には、顧客の視点に立ったアプローチを通じて、企業がどのように顧客と関わるかに焦点が当てられるようになりました。
中期から後期の2000年代
この時期には、顧客の購買から利用、アフターサポートまでの一連のステップを理解し、改善する重要性が広まりました。顧客が商品やサービスを知り、購入するまでの過程をホリスティックに捉える概念として、カスタマージャーニーのアイデアがより具体化しました。
2010年代
ソーシャルメディアやデジタルテクノロジーの普及により、顧客の行動や意識がより多様化しました。この時期には、複数のチャンネルを通じての顧客体験の重要性が強調され、企業はそれに応じてカスタマージャーニーを戦略に組み込むようになりました。
2020年代(現代)
カスタマージャーニーは現代のビジネス戦略において不可欠な要素となっています。顧客の視点を中心に据え、顧客のニーズや要求に合わせて体験を設計し、持続的な関係を築くためのアプローチとして、多くの企業が取り組んでいます。
カスタマージャーニーの把握が必要な理由
顧客中心の考え方や顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)の重要性の高まりによって、カスタマージャーニーの把握はますます重要性を増しています。以下に、その理由を詳しく説明します。
顧客中心の重要性
ビジネスの成功は、顧客のニーズと要求に適切に応えることにかかっています。顧客中心のアプローチでは、顧客の視点や期待を優先し、その体験を最適化することが目指されます。カスタマージャーニーマップは、顧客の実際の行動や感情を捉え、そのニーズを理解するためのツールとして不可欠です。
総合的な体験(CX)の追求
顧客は単なる製品やサービスだけでなく、その全体的な体験を求めています。カスタマージャーニーは、顧客が製品やサービスをどのように利用するかを理解し、その過程での喜びや課題を特定する手助けをします。これにより、より魅力的な体験を提供することが可能です。
顧客関係の構築
顧客体験が良好であると、顧客はブランドとの関係を維持し、リピーターになる可能性が高まります。カスタマージャーニーは、顧客がどのようにブランドとの接点を持ち、その関係を発展させていくかを示す手がかりを提供します。
競争力の向上
顧客が良い体験を求める一方で、競争も激化しています。他社と差別化するためには、顧客の視点を重視し、それに基づいてカスタマージャーニーを設計・改善することが重要です。これにより、他社に勝る顧客体験を提供することができます。
データドリブンの意思決定
カスタマージャーニーはデータドリブンのアプローチを支援します。
データドリブンのアプローチは、ビジネスの意思決定や戦略立案において、客観的なデータや分析結果を中心に据える方法論です。
顧客の行動データやフィードバックを基に、洞察を得て戦略を立てることができます。これにより、客観的なデータに基づいた意思決定が可能となります。
つまり、顧客中心の考え方や顧客体験の重要性が高まる中で、カスタマージャーニーの把握はビジネス成功のための鍵となっているのです。顧客の行動や感情を理解し、それに基づいて戦略を展開することで、持続的な関係構築と競争力の向上が実現します。
カスタマージャーニーの課題
顧客の行動パターンとニーズは、デジタル時代においてますます複雑になっています。従来のマーケティングや消費行動のモデルでは捉えきれない新たな側面が浮かび上がり、それに適応することが求められています。その中で、カスタマージャーニーというコンセプトが重視されるようになりました。カスタマージャーニーは、顧客の体験を総合的に理解し、ブランドとの関係を構築するための道具として不可欠なものとなっています。
しかし、今日のカスタマージャーニーは、もはや単純な線形のプロセスでは表現できないほど多次元で複雑なものとなっています。顧客は、多様なチャネルやタッチポイントを行き来し、感情や外部要因によって意思決定を行っています。このため、私たちはカスタマージャーニーについて、新たな視点で考える必要があります。
複雑化するカスタマージャーニー
2000年以降、カスタマージャーニーマップが広く認知されていくと同時に、消費者行動はますます複雑化していきます。AIDMAやAISASのような線形の消費行動モデル、いわゆるジャーニー型消費行動モデルとは異なる動きが出現し、Googleが提唱するパルス型消費行動モデルといった新たな消費行動が見られるようになりました。
ジャーニー型消費行動について
従来のジャーニー型消費行動モデルとして、AIDMAを説明しておきましょう。AIDMAは、マーケティングにおける基本的な顧客の購買プロセスを表すモデルです。各ステップは、以下の頭文字からなる言葉で表されます。
Attention(注意)
顧客の注意を引くことから始まります。マーケティング活動や広告を通じて、顧客が製品やサービスに関心を持つように誘引します。
Interest(興味)
顧客が注意を引かれた後、興味を持つ段階です。製品やサービスの特徴や利点に関心を抱き、詳細を知りたいと思う段階です。
Desire (欲望)
興味を持った顧客は、次にその製品やサービスに対する欲望を感じるようになります。その商品が自分のニーズを満たし、欲しいと感じる段階です。
Memory(記憶)
顧客はその後、製品やサービスについての情報を記憶します。これにより、長期的な効果を狙うための準備が整います。現代的には、MemoryというよりもMotivation(動機)かなと思います。購買のための自己説得というイメージです。
Action(行動)
欲望を持った顧客が、実際に行動を起こすステップです。購買行動を行ったり、サービスを利用したりする段階です。
このモデルは、顧客の購買行動を一連のステップに分解し、各ステップにおいてどのようなアプローチが有効かを考える際のガイドとなるものです。
ただし、近年の消費者行動の複雑化により、このような線形なモデルだけでは顧客の行動を十分に説明できないケースが増えています。そのため、より多様なアプローチやモデルを組み合わせて考えることが求められているのです。
ここからは、カスタマージャーニーが複雑化した背景と、対応方法について考えていきましょう。
カスタマージャーニーの複雑化の背景
消費者行動の複雑化と新たな消費行動モデルの出現は、カスタマージャーニーマップの進化と戦略の調整を必要とする重要なトピックです。以下に、カスタマージャーニーが複雑化した背景をまとめます。
マルチチャンネルの普及
インターネットの普及により、顧客は複数のデジタルチャンネルを利用して情報を収集し、商品を購入するようになりました。これにより、顧客の接触ポイントが増加し、ジャーニーが複雑化しました。
個別のニーズと選好
消費者はますます個々のニーズや選好を重視するようになりました。これにより、異なる人々が同じ商品やサービスを異なる方法で体験する可能性が高まり、ジャーニーのバリエーションが増えました。
エモーショナルな側面の重要性
顧客の購買や行動決定には感情やエモーションが影響を与えることが明らかになりました。これにより、顧客の体験は感情的な側面を考慮したものになり、ジャーニーがより多次元的なものとなりました。
非線形な動き
顧客の行動はAIDMAのような線形ではなく、予測困難な動きをすることがあります。例えば、商品を検索している段階から突然購入に至ることもあれば、逆に購入に至る流れが唐突にキャンセルされることもあります。
データの複雑さ
デジタル時代において、多くのデータが生成されますが、それを収集し、分析して洞察を得ることは困難なタスクです。消費者の行動は、以前よりも多くのチャネルから影響を受けて変化するため、限られたデータ範囲では因果関係がつかめなくなっています。
外部要因の影響
経済、社会、環境などの外部要因も顧客の行動に影響を与えます。世界経済はつながっているため、マクロ経済のさまざまな影響がミクロの消費行動にも反映されます。
競合環境の変化
競合他社の動向や市場の変化もカスタマージャーニーに影響を与える可能性があります。顧客は選択肢を持ち、他社と比較して体験を評価するため、競合環境も考慮しながら改善を行う必要があります。
線形のジャーニー型消費行動モデルからの脱却
消費者行動の多様性と複雑性が増す中で、パルス型消費行動や他の新たなモデルが登場しても、それらはすべての消費行動を説明するものではありません。しかしながら、現代においては、カスタマージャーニーが非線形であるという視点が適切であると言えます。
カスタマージャーニーは時代遅れ?
カスタマージャーニーを時代遅れと考える人は、おそらく線形モデルにとらわれたカスタマージャーニーを指しているのではないかと思います。
線形ではなくても、カスタマージャーニーは依然として存在するわけです。ですから、非線形の新たなカスタマージャーニーをモデリングする必要がある、という事ではないでしょうか。
カスタマージャーニーの重要性は増している
カスタマージャーニーが非線形であることは、消費者が複数のタッチポイントを行き来し、異なるルートやステップを通って行動することを意味します。この非線形性は、個々の消費者の行動パターンやエモーション、状況による影響などを反映しています。
つまり、線形のジャーニー型消費行動モデルでの把握が限界となり、カスタマージャーニーが非線形であっても、その存在は時代遅れではありませんし、実際にはますます重要になっています。
消費者は複数の情報源から情報を収集し、インタラクティブな手段でブランドと関わります。そのため、線形モデルにとらわれた古い視点から脱却し、現実の顧客行動をより正確に捉える必要があります。
消費者はブランドとの接触面を絶えず通過する
非線形モデルのカスタマージャーニーでは、消費者は連続的にブランドとの接触面を通過しながら、その都度エモーションや消費者自身の文脈に基づいて購買や関与の判断を行っています。以下が重要なポイントです。
連続的な接触
消費者は複数のタッチポイントやチャネルを通じてブランドとの接触を持ちます。これは、オンライン広告、ソーシャルメディア、リテールストアなど、さまざまな場所で行われます。
エモーションの重要性
消費者の購買行動や関与には感情やエモーションが影響を与えます。消費者がその瞬間の気分や感情に基づいて判断を下すことがあり、これが購買のスイッチを入れたり切ったりする要因となります。
非線形な動き
消費者は従来の線形なモデルにとらわれず、自分のニーズや選好に合わせて非線形な動きをします。興味を持ったり関与したりする段階が途切れ途切れになることもあります。
複数の態度変容ポイント
非線形モデルでは、消費者の行動は複数の態度変容ポイントで形成されます。これらのポイントでは、消費者が製品やサービスに対する詳細な情報を得たり、他の人々の意見を参考にしたりすることがあります。
個々のエクスペリエンス
各消費者は個別のエクスペリエンスを持ちます。そのため、購買や関与の意思決定は、一律のパターンではなく、個々の経験に基づいて変化します。
連続であって非線形、という意味
非線形モデルのカスタマージャーニーでは、消費者はエモーションを重視して、連続的にブランドと接触しながら購買や関与の意思決定を行っています。この非線形な動きを理解し、各消費者の状況やエモーションを考慮した戦略を展開することが、成功する顧客エンゲージメントに不可欠です。
連続的に接触面を通過しながら、非線形な動きが起きる、とはどういう事でしょうか。
消費者の行動や判断は、単純な線形プロセスでは捉えきれないほど複雑で多様です。そのため、一度接触したタッチポイントから別のタッチポイントへ移動し、興味を持ったり欲望を感じたりする非線形なパターンが生じることがよくあります。
たとえば、消費者が商品の広告をオンラインで見て興味を持ち、その後店舗で実際に触ってみて更なる興味を感じ、そして最終的にオンラインで購入するというようなパターンが考えられます。
このような非線形の動きは、消費者の行動がさまざまな要因や刺激によって影響を受け、複雑な意思決定が行われる結果として現れるものです。
このような非線形性を理解し、それに合わせた戦略を展開することで、ブランドは消費者の多様な行動に対応し、より効果的なエンゲージメントを実現することができます。
従来の線形モデルだけではなく、非線形なカスタマージャーニーを考慮することが、現代の消費者行動に適切に対応するための重要なステップです。
非線形モデルとオムニチャネル戦略
非線形なカスタマージャーニーの理解とオムニチャネル戦略は密接に関連しています。オムニチャネル戦略は、消費者が複数のチャネルやタッチポイントを自由に行き来して、シームレスなエクスペリエンスを得ることを目指すアプローチです。ここでは、その関連性を詳しく説明します。
複数のチャネルと接触面
オムニチャネル戦略では、消費者がオンライン、オフライン、モバイル、ソーシャルメディアなど、複数のチャネルと接触面を持つことが想定されています。非線形なカスタマージャーニーの中で、消費者がさまざまなチャネルを行き来することがあります。
一貫性の提供
オムニチャネル戦略では、ブランドのメッセージや体験を異なるチャネル間で一貫して提供することが重要です。非線形なカスタマージャーニーの中で、消費者は異なるタッチポイントでブランドと関わるため、一貫性のある体験が求められます。
顧客中心のアプローチ
オムニチャネル戦略は、消費者のニーズと選好に合わせた体験を提供することを目指します。非線形なカスタマージャーニーでは、消費者が個々のニーズや選好に応じて異なるタッチポイントを選択するため、顧客中心のアプローチが重要です。
エモーショナルな結びつき
オムニチャネル戦略は、顧客とブランドの間にエモーショナルな結びつきを築くことを目指します。非線形なカスタマージャーニーでは、消費者のエモーションや感情が購買や関与の決定に影響を与えるため、エモーショナルな側面を重視したアプローチが求められます。
データドリブンの最適化
オムニチャネル戦略は、データドリブンのアプローチを活用して消費者の行動を理解し、戦略を最適化することを促します。非線形なカスタマージャーニーでは、消費者の多様な動きを捉え、データに基づいた洞察を得ることが重要です。
つまり、非線形なカスタマージャーニーの理解とオムニチャネル戦略は、消費者の多様な行動や接触面に対応するために結びついています。オムニチャネル戦略を通じて、消費者が自然な流れで異なるタッチポイントを行き来し、その都度エモーションやコンテキストに基づいた行動をとる非線形なカスタマージャーニーをサポートすることができます。
オムニチャネル戦略と同時に重要なデジタルプレゼンス
このオムニチャネル戦略とデジタルプレゼンスは、非常に密接に関連しています。両者は、消費者の多様な行動やエクスペリエンスに対応するためのアプローチとして、現代のビジネス環境で重要な役割を果たしています。
デジタルプレゼンスとは
ブランドや企業がオンラインプラットフォームを通じて存在感を持ち、消費者との関係を構築する能力をデジタルプレゼンスと言います。この2つのコンセプトが結びつくことで、より総合的な顧客エクスペリエンスが提供されるのです。
デジタルプレゼンスは、オンラインプラットフォームを活用して顧客にアプローチし、関与を促進します。消費者はウェブサイト、ソーシャルメディア、アプリなどを通じて情報を得たり、商品を購入したりすることがあります。こうしたデジタルな接触面を通じて、消費者のエモーションや選好にアプローチすることができます。
デジタルプレゼンスとオムニチャネルの親和性
オムニチャネル戦略は、顧客がオンラインだけでなくオフラインでもブランドと関わることを可能にし、シームレスな体験を提供します。消費者はリテールストアで商品を試したり、オンラインで購入したりすることがあります。こうした異なるチャンネルをシームレスに統合し、消費者が選択するチャンネルに合わせた体験を提供することができます。
デジタルプレゼンスとオムニチャネル戦略を組み合わせることで、顧客はブランドとの関わりをより自然な形で行い、その都度のエモーションや状況に基づいた行動を取ることができます。これにより、非線形なカスタマージャーニーを支援し、消費者の多様な行動に対応する効果的な戦略が実現されるのです。
デジタルプレゼンスとカスタマージャーニーの関わり
非線形なカスタマージャーニーを理解し、それに適切に対応するためには、デジタルプレゼンスを構築することが重要です。両者は互いに関連し合い、ブランドと消費者との関係をより深化させるために組み合わせられる重要な要素となっています。
このデジタルプレゼンスを構築することで、ブランドはオンラインプラットフォームやデジタルチャネルを活用して消費者との接触を強化し、エモーションや価値を伝える機会を創出できます。これにより、消費者はブランドとの関わりを非線形なカスタマージャーニーの中でより自然に行い、それに合わせて行動をとることができます。
ジャーニーのどの段階で、どのチャネルで接触し、何を伝えるのか
デジタルプレゼンスの対策として提供される情報やコンテンツは、消費者が興味を持ち、関心を持つきっかけとなる可能性を考慮しています。既存顧客であっても、この原則は変わりません。また、オンラインとオフラインの両方でブランドと関わる可能性も視野に入れます。無店舗の場合でも、商品のパッケージや同根物もブランドのプレゼンスを向上させる要素です。
これにより、消費者は自分のタイミングや好みに合わせて異なる接触面を通じてブランドと関わり、購買や関与の意思決定を行うことができます。
デジタルプレゼンス構築は、カスタマージャーニーと表裏一体
消費者に情報を提供し、エモーションを喚起し、関与を促進するための手段として、デジタルプレゼンスの構築は非常に重要です。そして、そのデジタルプレゼンスを通じて消費者が非線形なカスタマージャーニーを自然に進めることができるのです。両者を組み合わせることで、ブランドは消費者の多様な行動や選好に適切に対応し、積極的なエンゲージメントを促進することが可能となります。
カスタマージャーニーの現代的解釈
デジタルプレゼンスの観点から見ると、消費者は購買意思を持つか否かに関わらず、連続的にブランドとの接触面を通過しながら日常生活を過ごしています。消費者はインターネットやソーシャルメディア、アプリなどを通じて様々な情報を探索し、無意識のうちに多くのブランドとの接触を持っています。
この中で、消費者がエモーショナルで自分の文脈に合致する情報体験をピックアップするというのは非常に重要なポイントです。消費者は無数の情報の中から、自分にとって価値ある情報やエンゲージングなコンテンツを見つけ出し、その中で共感や興味を感じることがあります。これにより、消費者はブランドへの肯定度や好感度を蓄積していくのです。
このような日常的な接触や情報探索の過程で、消費者はブランドの特徴や価値観、提供するソリューションなどを知る機会を持ちます。また、ブランドのコンテンツやコミュニケーションを通じて、エモーショナルなつながりを感じることがあります。これにより、消費者は購買意思を持つタイミングが訪れた際に、そのブランドに対する前向きな感情や信頼を持って接することができるのです。
新たなカスタマージャーニーをモデリングする
パルス型消費行動など新たな消費行動モデルに対応するには、顧客の体験と行動を理解し、新たなカスタマージャーニーをモデリングすることが重要です。
これにより、顧客の多様な行動や期待に対応し、ブランドとの関係性をより深化させることが可能になるでしょう。非線形なカスタマージャーニーの捉え方を取り入れた場合に、カスタマージャーニーマップはどう変化するでしょうか。
デジタルプレゼンス(当社ではデジタルブランディング戦略と呼んでいます)の形成を念頭に、Googleの提唱するパルス型消費行動の中で語られるバタフライサーキットの考えを引用して考えてみましょう。
パルス型消費行動のステップをモデリングする
初期状態(ゼロステップ)
線形モデルでいうところの認知段階や興味段階は、曖昧に、絶えることなく延々と横たわっています。何気ない情報探索の中で、自分にとって価値ある情報を漠然と探しており、商品そのものへの興味であることは稀でしょう。
認知と興味の間で受動的/能動的に情報接触を繰り返します。これが初期状態ですが、ここにもブランドとの接触面があり、肯定度や好感度あるいはその反対を蓄積しています。
さぐるステップ
消費者は日常の情報探索活動の中で、エモーショナルな何かや自身の文脈に合った情報に出会うことで興味を喚起します。
興味が喚起されると、さまざまな情報源を通じてベネフィットやリスクを比較検討し、商品やサービスについての情報を集め始めます。
公式サイト、比較サイト、レビューサイトなどを活用し、評判や特徴を探求します。
かためるステップ
さぐるステップで高いベネフィットを見いだすと、購買意思を固めるステップに進みます。
ポジティブな情報とネガティブな情報を天秤にかけて、購買のメリットとデメリットを考えながら、自己説得を行います。この過程で新たな選択肢を見つけると、さぐるステップに戻ってしまう事もあります。
行動ステップ
かためるステップを通過し、購買意思を固めた消費者は、購買行動に移行します。ブランドの信頼性や商品の特徴に関する情報を重視し、最終的な判断を行います。
パルス型消費行動の特徴として、興味から購買までのステップを急速に駆け上がる動きが見られます。
消費者はオンラインやオフラインの購買チャンネルを通じて、決済方法や受け取り方法を選択し、商品やサービスを購入します。
各ステップでのマッピング項目
接触チャネルとコンテンツ
ターゲットにとって有用な情報はステップ毎に異なる事を考慮して、WEBページや動画、SNS、メールなどのチャネルとコンテンツを整理します。
感情
期待、不安や懸念などの感情が情報探索活動のモチベーションになります。
行動
WEB上の行動だけでなく、意思決定の影響を与える人との関わりなども考慮します。
ニーズや課題
本質的なニーズから表面的なニーズ、あるいは顕在化したニーズから潜在化したニーズまで存在します。さらに、競合との比較におけるニーズ変化などにも目を向けます。
インサイト
ペインやゲイン、ベネフィットやリスクが意思決定を左右します。
改善の方向性
行動が喚起されない、モチベーションがつながらない場面の改善について記述します。
これらのマッピングを通じて、消費者とブランドとの接触面で起こる顧客の体験を整理します。
消費者はブランドとの接触面を通じて肯定度や好感度を形成しています。また、消費者は自身のエモーションや文脈に合った情報をピックアップし、その中から選択肢を見極めることで、購買や関与の意思決定を行っています。このような動きを考慮して、デジタルプレゼンス(デジタルブランディング)戦略やオムニチャネル戦略を展開することが、現代の消費者行動に適切に対応するための鍵となります。