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NPS®︎とは何か?|関係性の強さを数値化する新たな指標

NPS®ネット・プロモーター・スコアとは?

NPS®(ネット・プロモーター・スコア)とは、顧客ロイヤルティ(企業・ブランドに対してどれくらい愛着・信頼をもっているか)を測る指標です。
近年、海外の有名企業をはじめ、国内で伸びている企業の多くがこのNPS®を活用しています。
この記事では、NPS®と顧客満足度アンケート(CS:Customer Satisfaction)との違いと、導入のメリット、測定のおおまかな流れをお伝えします。

NPS®とは、顧客ロイヤリティ(忠誠度)を測る指標

これまで、顧客心理を分析するためには顧客満足度(CS)を指標とするのが主流でした。
しかし、商品・サービスに対して満足していても、その他の要素(カスタマーセンターの対応、購入しやすさ、アフターフォロー、企業の体外的なイメージなど)に不満があると、リピート率は低くなります。
そこで、長期的に信頼や愛着がある状態を測るため、「顧客ロイヤルティ」という概念が生まれました。
顧客ロイヤルティの高い顧客は、その商品・サービスのリピーターであり、周囲の知人・友人へ推薦してくれる「ロイヤルカスタマー」でもあります。
「この商品を推薦したい」と思う推薦者の割合と、なぜ推薦するのかを掘り下げて測る指標が「NPS®:ネット・プロモーター・スコア」です。

NPS®は顧客の「推奨度」で、商品・ブランドとの関係性を表す指標

NPS®は、まず「この商品を知人・友人に推奨したいか」を10段階で評価してもらいます。
その上で、なぜその評価なのか、理由を定性的に書き出し、どこに推奨できない理由があるかを探ります。
推奨度を0-6点とつけた人を「批判者」、7、8点をつけた人を「中立者」、9、10点をつけた人を「推奨者」とし、その割合を算出します。
「推奨者」の割合から「批判者」の割合を引いた数が、NPS®の数値となります。

顧客満足度(CS)との違いは?

大きな違いは、NPS®が「他者にすすめる」という未来に向けた可能性を測るのに対し、CSは現在から過去の行動に着目する点です。
CSは提供したサービスを受けた時点での満足度になるため、また利用したいか、知人に紹介したいかなど、次のアクションにつながる可能性を測れません。
NPS®はその点で、収益性と連動すると考えられます。
実際、株式会社Emotion Techと日経BP社が共同で行った調査では、NPS®と収益性の相関関係があることが実証されています。

NPS®活用のメリット

LTV:生涯顧客価値の向上

今後、人口が減リ続ける日本において、生涯顧客価値(LTV)の最大化は事業成長の必須事項です。
そこで、NPS®を向上させる=批判者を減らし、推奨者が増えると、一人あたりのLTVも向上すると考えられます。
2016年にNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社が実施した調査では、「推奨者」が「批判者」に比べて7倍超の口コミを発信していたという結果が出ています。
上記調査をもとに、批判者と推奨者のLTVを算出したウェブ担当者フォーラムの記事によると、推奨者に区分される顧客のLTVは批判者の平均値と比べて2.4倍高い結果となっています。

推奨者のポジティブな口コミによる新規顧客の流入

推奨者の口コミは知人にとって、広告よりもはるかに信用性の高い情報です。
先に挙げたNTTコムの調査で、NPS®が高い企業の契約時の決定要因で最も多いのは「口コミ」で28.9パーセントとあります。
NPS®を向上は、批判者を減らすことでもあることから、ポジティブな口コミが増え、新規顧客が集まるネットワークになると考えられます。

NPS®を測定し、課題解決する流れ

NPS®は顧客体験のすべてを洗い出さなければ、改善すべき課題を見つけられません。
会社が提供する商品・サービスとの接点、来店前、商品を探す、購入、購入後などにどのような体験があるかを具体的にイメージしながら、測定・分析する箇所を見定めます。

1.顧客体験、タッチポイントを洗い出す

まずは、顧客が自社商品・サービスを知って購入、利用後までのタッチポイントを書き出してみましょう。ここでは、カスタマージャーニーマップの活用をお勧めします。
商品・サービス・会社を認知する場所はどこか。他社との比較検討に何を見て判断するか。
購入時は店頭か、ECか。申込フォームに必要事項を入力し、支払い方法を選択、購入確認のメールが届く。コールセンターへの問い合わせ。
このような、顧客が自社商品を知ってからアフターサービスを含めた全てのタッチポイントをリストアップします。

2.設問を設計

タッチポイントのリストアップができたら、アンケートの設問設計をします。
必要に応じて、属性情報などの追加質問を加えます。

1問目:「この商品、サービスを知人、同僚に薦めたいと思うか10点評価で教えてください」

2問目:1問目の点数をつける上で、「今回の評価によく影響したもの、悪く影響したところ、影響の度合いを教えてください」

商品によっては、初回購入、2回目、3回目の購入など顧客のフェーズに合わせて設問を変える(初回はスコアを聞くだけ、2回目以降は評価につながった理由、3回目以降は低評価につながった要因の深堀など)

3.調査結果をもとに、カスタマージャーニー上で解決すべきタッチポイントの優先順位をつける

各タッチポイントのスコアを、カスタマージャーニーマップに書き込みます。
NPS®スコア、影響度、改善にかかるコスト(時間、カネ)を掛け合わせて、タッチポイント改善の優先順位をつけます。

4.改善施策を設定

優先順位が高いタッチポイントで、顧客はどのような情報、対応を求めているかを精緻に予測し、カスタマージャーニーマップに書き出します。
その上で、自社が提供している対応や、発信内容とのズレを探し出し、改善施策を考えます。
施策を行う時に必ず行っておきたいのが、施策目的の明確化(タッチポイント上で、どの課題に対しどのような目的で実施するのか)と、施策の成否を定量評価できる目標(KPI)設定です。
例えば、ウェブで言うところのページスピード、入力フォームの項目数、離脱率などの具体的な数値。ウェブ以外でも、接客態度や親密さ、スピード、レジ対応などの評価などです。
NPS®の構成要素はタッチポイントごとユーザー評価でできていて、そのユーザー評価を向上させるための具体的な目標数値がKPIになります。
施策の成否はもちろんですが、施策の元となった仮説検証を行えるようにしておくことで、ブレなく改善を進められます。

5.継続的な改善を続ける

施策実施後、設定したKPIに対しての達成度とNPS®の推移を計測します。
KPIを達成し、タッチポイントの評価が向上した場合、優先順位に沿った別のタッチポイントを改善します。
KPIを達成しなかった場合、達成に向けて解決すべき課題を探り、施策を検討します。KPIに達しているのに評価が向上しない場合は、KPIの見直しを図りましょう。

NPS®を活用して事業成長を加速させましょう

NPS®を使って、商品・サービスへのファンを増やすための分析、改善をすると、事業成長が加速すると考えられます。
事業の課題が見えない、リピーターが増えないなどのお悩みに、NPS®が糸口になり得るでしょう。

参考: