導線設計とは
導線設計とは、人や物を目的の場所やコンテンツに誘導するための移動経路を設計することです。主に、ウェブサイトだけではなく、建物や商業施設などの設計において、顧客やユーザーの行動を予測し、最適な導線を設計することで、目的の達成を促します。
導線設計の目的は、以下のとおりです。
- 顧客やユーザーの目的達成を促す
- 顧客やユーザーの満足度を向上させる
- 顧客やユーザーの離脱率を低下させる
- 売上や利益を向上させる
導線と動線の違い
よく似た言葉で、動線というのがあります。
導線と動線は、どちらも人や物の動きを表す言葉ですが、意味合いには違いがあります。
導線とは、人や物を「導く」という意味の言葉です。一方、動線とは、人や物が「動く」という意味の言葉です。
動線設計とは、人が移動する経路を確保するための計画・設計です。主に、商業施設やオフィスなどの設計において、人の安全や効率を向上させるために行われます。
導線設計とは、人や物を目的の場所やコンテンツに誘導するための移動経路を設計することです。主に、商業施設やウェブサイトなどの設計において、顧客やユーザーの行動を予測し、最適な導線を設計することで、目的の達成を促します。
つまり、導線は「特定の目的を達成するために設計された動線」と言えます。動線は、移動する際に形成される移動経路を指します。
ウェブサイトの導線|入り口は何処なのか
トップページは必ずしもサイトの入り口ではありません。一般的に、トップページはウェブサイトの中心的なページであり、他のコンテンツやセクションへのリンクが配置されていることが多いですが、からなず入り口になるワケではありません。
もう少し補足的に言うと、自社名やブランド名検索など「既に自社を知っている人」の入り口になるのがトップページです。この意味を、おわかりになるでしょうか。自社を知らない人は、どこからサイトにやってくるかを考えてみましょう。
私たちの情報探索行動を観察する
例えば何かを調べているとき、検索エンジンの結果からサイトにアクセスするとします。多くの場合、トップページではなないはずです。多くの場合、その検索の意図に合致したページが入り口ページになっています。
このように、検索エンジンから特定のコンテンツに直接アクセスする場合や、外部のサイトで紹介されたコンテンツのリンクをたどってアクセスする場合など、私たちが普段行っているWEB上での行動を観察してみると、「入り口はトップページだけではない」という事がご理解いただけるでしょう。
実際には、広告、SNS、メールなど、ユーザーはさまざまな経路でウェブサイトにアクセスするため、トップページ以外のコンテンツ、つまり下層のページから閲覧を開始することを考慮する必要があります。
訪問意図に沿った経路を用意する
したがって、ウェブサイトの設計では、ユーザーがどのページからアクセスしても適切にナビゲーションできるようにすることが重要です。各ページはユーザーの特定の目的に応える情報を提供するものであり、関連する重要な情報や機能にアクセスするための手段を提供する必要があります。
もちろんトップページも、重要な役割を果たします。ユーザーがウェブサイトの全体像を理解し、どこにどのような情報があるか、目的を達成するにはどこに行けば良いかを把握できるよう、配慮する必要があります。
つまり、ウェブサイトの入り口はトップページだけではなく、ユーザーがアクセスするどのページからでも良好なユーザーエクスペリエンスを提供する必要があるということです。
それゆえに、トップページを基点として構造だけではなく、ユーザー行動を起点とした”ボトムアップアプローチ”でサイトの構造を考える事が重要なのです。
ユーザー起点のボトムアップアプローチ
ボトムアップアプローチとは、ユーザーの視点や要求に基づいて作業を進める手法です。ウェブサイトの設計においては、ユーザーのニーズや目標を理解し、それに合わせてサイトの機能やナビゲーションを設計します。
以下の手順に従って進めます。
ユーザーの調査とインサイトの収集
ユーザーの特性や行動パターンを理解するために、ユーザー調査やアンケート調査、ユーザーテストなどの手法を使用します。これにより、ユーザーのニーズや課題を把握し、サイト設計に反映させることができます。
ユーザーの目的と行動経路の設計
ユーザーがサイトを訪れる主な目的を明確にし、それに基づいた行動経路を設計します。ユーザーが求める情報や機能を素早く見つけられるよう、サイトのナビゲーションやコンテンツ配置を構築します。
ユーザビリティの確保
ユーザーがサイトをスムーズに操作できるよう、使いやすさと直感性を重視します。ユーザビリティテストを行い、ユーザーが直面する問題や課題を洗い出し、改善点を見つけます。
ビジネス目線のトップダウンアプローチ
トップダウンアプローチとは、ビジネスや組織の視点から始め、上位レベルの戦略や目標に基づいて作業を進める手法です。
つまり、ビジネスの目標や要件を定義し、それに基づいて下位レベルの詳細を設計していくアプローチです。ウェブサイトの設計においては、ビジネスの戦略や目標を中心に考え、それに合わせてサイトの機能やコンテンツを計画します。
以下の手順に従って進めます。
ビジネスの目標と要件の明確化
ビジネスの戦略や目標を明確にし、それに基づくサイトの要件を洗い出します。収益化の手段やマーケティング戦略などを考慮し、それらをサイト設計に組み込みます。
コンテンツ戦略の策定
ビジネスの目標を達成するために必要なコンテンツを計画します。コンテンツの作成と配置は、ユーザーが求める情報やビジネスの目標に応じて最適化されるべきです。
ユーザーとのバランス
ビジネス目線のアプローチでは、ビジネスの目標を達成しながら、ユーザーのニーズも満たすことが重要です。ユーザビリティの確保やユーザーのフィードバックを取り入れることで、ビジネスとユーザーのバランスを取ります。
ナビゲーションと情報アーキテクチャ
ユーザーの認知構造に合わせたナビゲーションと情報アーキテクチャの設計も重要です。ユーザーの認知構造を考える上では、認知科学的観点、記号言語学観点、短期学習の観点を組み合わせて考えることが重要です。
ユーザーの認知の能力に合わせる
認知科学の観点では、ユーザーの情報処理や記憶、注意の特性を考慮します。ユーザビリティを向上させるために、情報の提示や整理方法に配慮します。
記号言語学の観点では、適切な記号やアイコンの使用に注意します。アイコンや言語の選択は、ユーザーが直感的に理解しやすいものである必要があります。
短期学習の観点では、ユーザーが新しい情報やインターフェースを迅速に学習できるように設計します。一貫性と一般化、フィードバックと誘導の提供などが重要な要素です。
以下は、これらを踏まえて設計を行う手順です。
シンプルなナビゲーション
ユーザーが迷わずに目的地にたどり着けるよう、シンプルで直感的なナビゲーションを設計します。適切なカテゴリやラベルを使用し、サイト全体の情報設計を行います。
ナビゲーションにはサイト全体を見渡せる展望性が必要で、メニューの数が多くなりすぎると情報の把握性が低下し、探しにくくなります。主となるメニューの数は、5〜7個程度が適切とされています。
一方で、頻繁にアクセスしないものや一部のユーザーしか利用しないメニューをあえて遮蔽することで、大多数のユーザーに利便性を提供できる場合もあります。多くのページを抱えるサイトの設計には認知に関する専門的な知識が必要になります。
ユーザーの期待に沿った配置
ユーザーが情報を探す際に期待するパターンに沿って、情報の配置を行います。
例えば、会社の住所や代表者の情報は「会社案内」というメニューに含まれるだろう、事業紹介には、その会社が展開するサービスが一覧で見られるだろう…といった具合に、ユーザーはこれまでの自身の経験に照らして情報をパターン化して持っています。ですから、ボタンのラベル(メニュー名)から、自分の期待する情報が格納されている事を期待するのです。
一般的なウェブデザインのパターンやユーザビリティのベストプラクティスに基づいて、ユーザーの認知負荷を軽減するような配置を考慮します。