ユーザー目線とは
言葉にすると当たり前の説明になってしまいますが、ユーザー目線とはユーザーの立場に立って考えることです。ユーザーが何を求めているのか、何を困っているのか、何を喜んでいるのかを理解し、それに応えるようなサービスを提供することが大切です。
ユーザー目線が注目される理由
ユーザー目線が注目される理由は、まずはこれがサービス提供がビジネスにポジティブな影響をもたらす事が第一にありますが、同時にユーザー目線の理解が意外と難しいという点にもあると思います。
ユーザー目線がビジネスにポジティブな影響をもたらす
ユーザー目線に立ったサービスは、ユーザーの満足度を向上させ、サービスの利用率を高めることができます。また、ユーザーのニーズを的確に捉えたサービスは、ビジネスの成功につながります。
ユーザー目線の理解は意外と難しい
ユーザー目線に立ったサービスを提供するために、ユーザーのニーズや課題を正しく理解する必要があります。しかし、ユーザーはそれぞれ異なる考え方や価値観を持っているため、ユーザー目線を理解することは意外と難しいものです。その上、通常私たちは主観的な世界を生きているので、他者が見ている世界を客観的に捉え、その視点に立って物事を見るには相応の知識やスキルが必要になるのです。
ユーザー目線を理解するプロセス
ユーザー目線を理解するプロセスにおいては、まず、ユーザーの行動や思考を客観的に観察することが大切です。
ユーザーの行動や思考を観察する際には、自分の主観的な解釈を排除し、事実を確認したうえで、分析的に観察することが重要です。人間はどうしても自分の都合で解釈したくなってしまうため、事実やデータを重視することで、客観的な観察を実現することができます。
ユーザーの行動や思考を観察する具体的な方法としては、以下のようなものが挙げられます。
- ユーザーインタビューやアンケートなどを通じて、ユーザーの声を収集する
- ユーザーの行動をつぶさに観察する
- ユーザーの行動の裏側にある思考を分析する
ユーザーの行動や思考を観察することで、ユーザーの目に映るもの、ユーザーの行動の特性がわかります。ここから、ユーザーのニーズや課題をより深く理解することができます。
ユーザー行動と思考の分析
ここでは、ユーザー行動の観察からユーザーニーズを分析する技法として、エンパシーマップをご紹介します。
エンパシーマップとは
エンパシーマップ(共感マップ)は、見ている、聞いているもの、やっていることなどの行動観察から、その人のホンネである”得たいと思っていること/避けたいと思っていること”を見つけ出します。
エンパシーマップは、以下の6つの要素で構成されています。
- 考えていること・感じていること
ユーザーが考えていることや感じていることを、具体的な言葉で書き出します。 - 言っていること、行っていること
ユーザーが言っていることや行っていること、具体的な行動を書き出します。 - 聞いていること
ユーザーが聞いている音や声、具体的な情報を書き出します。 - 見ていること
ユーザーが見ているものや景色、具体的な情報を書き出します。 - 痛みやストレス(ペイン)
ユーザーが感じている痛みやストレス、具体的な問題を書き出します。 - 得るもの(ゲイン)
ユーザーが得ているものやメリット、具体的な成果を書き出します。
エンパシーマップを作成することで、ユーザーの視点に立って考え、ユーザーのニーズや課題をより深く理解することができます。
ユーザー中心設計の4ステップ
ユーザー中心設計(Human-Centered Design、HCD)とは、ユーザー目線でニーズや課題を理解し、それらを解決するためにサービスを設計するプロセスです。ユーザーを起点としたデザインを行うことで、ユーザーの満足度や利用率を向上させることができます。
ユーザー中心設計のプロセスは、調査・分析・設計・評価の4つのステップに分けることができます。
- 調査
ユーザーのニーズや課題を理解するために、ユーザーインタビューやアンケートなどを通じて、ユーザーの声を収集します。また、ユーザーの行動や思考を観察することで、ユーザーの実際の利用状況を把握します。 - 分析
調査で収集したデータを分析し、ユーザーのニーズや課題を明確にします。また、ユーザーの行動や思考を分析することで、ユーザーの心理や行動を理解します。 - 設計
ユーザーのニーズや課題を解決するために、サービスのコンセプトやデザインを検討します。また、プロトタイプを作成してユーザーテストを行い、設計を改善していきます。 - 評価
実際にサービスをリリースして、ユーザーの反応を評価します。また、ユーザーのフィードバックをもとに、サービスを改善していきます。
ユーザー中心設計の5つの要点
1.ユーザーのニーズを理解することが重要
ユーザーのニーズを理解することは、ユーザー中心の設計思考の基本です。ユーザーの視点に立ち、エンパシー(共感)を持つことで、”目に見える行動”の裏にある欲求や要求を理解することができます。
2章でご紹介したエンパシーマップを活用すると、ユーザーの目線と行動の動機について、深い洞察を得る事ができます。この洞察を基にして、ユーザーの本当のニーズを把握しましょう。
2.問題を明確に定義する
問題の定義は、ユーザー中心の設計思考において重要なステップです。顧客の課題や障壁を特定し、それらを解決すべき問題として明確化することが求められます。
例えば、顧客が抱えている課題は何か、解決する手段は何か、コストはどの程度まで可能か、その手段の実行に葛藤はあるか…といったことです。サービス提供側の都合で考える課題ではなく、ユーザー目線で課題を捉える事が大切です。
明確な問題定義により、解決策の方向性が明らかになり、効果的なアイデアの創出に繋がります。
3.多様なアイデアを創出する
ユーザー中心の設計思考では、多様なアイデアを創出することが重要です。アイデアの多様性は、新たな視点や創造的な解決策を生み出すことに繋がります。
アイデアの創出にはブレインストーミングセッションやデザインスプリントなどの技法がありますが、詳細は今後別の記事でご紹介したいと思います。
まずは既成概念にとらわれず、発散的に思考を拡げていくことが大切です。ポイントは、「そんなのはダメ」「意味がない」など良否をすぐにジャッジをしてしまわないこと。多角的なアイデアをたくさん生み出しましょう。
4.早期のフィードバックを得るためにプロトタイプを作成
プロトタイプとは、アイデアやコンセプトを具体的な形に落とし込んだ実験的なモデルで、早期のテストやフィードバックを通じてアイデアの検証や改善を行うためのツールです。
紙やカードを使用して作成するペーパープロトタイプやワイヤーフレーム、デジタル上で擬似的に動作するインタラクティブプロトタイプなどがあります。プロトタイプ作成は、ユーザー中心の設計思考において重要な手法です。
早い段階で実際のプロダクトやサービスの一部を試作し、ユーザーからのフィードバックを収集します。これにより、早期に問題を発見し、改善点を特定することができます。
5.ユーザーの反応に基づいてプロトタイプを改善
ユーザー中心の設計思考では、ユーザーのフィードバックに基づいてプロトタイプを改善することが重要です。被験者を集めるのが大変ですが、可能であれば設定したユーザーモデルやペルソナに近い人からフィードバックを得られると有効です。
ユーザー目線を、顧客の意見や行動から分析し、プロトタイプを最適化していきましょう。プロトタイプテストにコストがかけられない小規模なサイトであれば、とりあえずリリースしてヒートマップツールなどで実際のユーザーの動きを確認するのは現実的な方法です。
持続的な改善を通じて、より優れたユーザーエクスペリエンスを提供することが目指されます。