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自社分析と競合分析|彼を知り己を知れば百戦殆からず

自社分析と競合分析は戦略策定の上で非常に重要な最初の一歩です。競合分析と自社分析を同時に考えることは非常に有益です。両方の分析を組み合わせることで、より包括的な洞察を得ることができます。
本稿では、自社分析と競合分析の考え方や手法、フレームワークについてご紹介していきます。

自社分析とは

自社分析では、自社の内部状況や能力を評価し、現状の強みや弱みを把握します。資源、能力、ビジネスプロセス、ブランドイメージ、顧客基盤などの要素を評価することで、自社の戦略に基づいた優位性を見つけることができます。自社の独自性やコアコンピタンスを明確にすることで、競争優位性を持つ戦略を構築できます。

競合分析とは

競合分析では競合他社の戦略、製品、サービス、市場シェア、顧客セグメントなどを分析します。他社の強みや弱み、市場へのアプローチ、顧客のニーズへの対応などを評価することで、自社の位置を把握することができます。他社の戦略やマーケット動向を理解することで、自社の差別化要素や市場でのポジショニングを特定できます。

競合分析と自社分析は同時に行う

競合分析を行うことで、他社の強みや弱み、市場の動向、競争環境を把握できます。これにより、自社の競争優位性や差別化ポイントを見つけることができます。しかし、競合分析だけでは自社の内部要素や能力、戦略の評価が不十分です。

一方、自社分析は、自社の内部状況や能力を評価し、自社の強みや弱みを明確にします。これにより、自社の戦略や改善点を特定することができます。しかし、自社分析だけでは市場の全体像や競合他社との比較が不十分です。

ですから、競合分析と自社分析を同時に行うことにより、以下のようなメリットを得られます

競争環境の理解

競合分析によって市場の競争状況や他社の戦略を把握し、自社の位置を明確にします。

自社の競争優位性の特定

自社分析によって自社の強みや差別化要素を特定し、競合他社との比較に基づいて競争優位性を評価します。

機会と課題の発見

競合分析と自社分析を組み合わせることで、自社が利用できる市場の機会や自社の課題を発見することができます。

戦略の改善と適応

両方の分析を総合的に考慮することで、自社の戦略やアクションプランを改善し、変化する市場に適応することができます。

競合分析と自社分析は、相互に補完しあうものであり、同時に考えることでより戦略的な意思決定を行うことができます。

これらの分析を実施することで、自社の強みや競争力、市場のチャンスやリスクを明確にし、戦略策定の基盤を構築することができます。自社の現状を把握し、競合他社との比較を通じて自社のポジショニングを確立することは、持続的な競争優位性を確保するために重要です。

ただし、自社分析と競合分析は一度きりではなく、定期的に実施することが推奨されます。市場や競合状況は常に変化しており、戦略的な柔軟性が求められます。そのため、自社分析と競合分析を継続的に行い、戦略の適応と改善を行うことが重要です。

自社分析と競合分析のためのフレームワーク

フレームワーク(Framework)は、特定の目的や問題に対して構造化されたアプローチや概念のセットです。フレームワークは、情報の整理や分析、問題解決、意思決定の支援、戦略策定など、さまざまな目的で使用されます。

以下に、自社分析と競合分析に利用しやすい、戦略分析/策定のフレームワークを紹介します。

4P/4C

P/4Cは、マーケティング分野におけるフレームワークです。
4Pは伝統的なマーケティングミックス(Marketing Mix)を表します、マーケティングミックスは、マーケティング戦略の要素を指す概念です。通常、商品やサービスを市場に提供する際に考慮すべき4つの要素で構成されます。これらの要素は、マーケティング活動を計画し、実施する上で重要な役割を果たします。

4Cは主に企業の視点から製品やサービスの戦略を考えます。一方、4Cは顧客中心のアプローチであり、顧客の視点から価値提供と関係構築を重視します。

4P(Product, Price, Place, Promotion)

マーケティングミックスの要素として広く知られています。以下の要素から構成されます。

  • 製品(Product) 提供する製品やサービスの特徴や品質、ブランドなどを考慮します。
  • 価格(Price)製品やサービスの価格設定や価値提供に関する戦略を考えます。
  • 流通(Place)製品の販売・流通チャネルや物流戦略について検討します。
  • 販促(Promotion)マーケティングコミュニケーションや広告、プロモーション活動を計画します、

4C(Customer, Cost, Convenience, Communication)

顧客中心のマーケティングに焦点を当てたフレームワークです。以下の要素から構成されます。

  • 顧客(Customer)顧客のニーズや要求を理解し、顧客価値を提供することに重点を置きます。
  • コスト(Cost)顧客にとっての価格やコストの要素を考慮します。
  • 利便性(Convenience)顧客の利便性や利用の容易さを重視します。
  • コミュニケーション(Communication)顧客との関係構築や相互コミュニケーションを重視します。

SWOT分析(Strengths, Weaknesses, Opportunities, Threats)

SWOT分析は、自社の強み(Strengths)と弱み(Weaknesses)を特定し、外部環境の機会(Opportunities)と脅威(Threats)を分析する手法です。これにより、自社と競合他社の相対的な位置付けや市場のチャンスとリスクを理解することができます。

  • 強み(Strengths)自社が持つ競争上の優位性やリソースを評価します。
  • 弱み(Weaknesses)自社の改善が必要な点や競合に対する不利な要素を評価します。
  • 機会(Opportunities)市場や業界の中で自社が活用できる成長の機会を評価します。
  • 脅威(Threats)市場や競合、外部要因によって自社に及ぼす潜在的な脅威を評価します。

クロスSWOT

つづいて、クロスSWOTと呼ばれるフレームワークもご紹介します。「クロスSWOT」は、SWOT分析で特定した4つの要素(強み、弱み、機会、脅威)を組み合わせて、戦略の選択や優先順位を明確にする手法のことです。具体的には、強みと機会を組み合わせたり、弱みと脅威を組み合わせたりすることで、戦略の選択肢を考慮し、適切な戦略を導き出すのに役立ちます。

クロスSWOT分析の主な目的は、以下のような点にあります

  • 戦略の重要度の把握
    強み(S)× 機会(O)と組み合わせた場合、優先度の高い戦略を特定することができます。これにより、組織が成長や機会を活用するための最適な戦略を立案できます。
  • 課題への対応
    弱み(W)× 脅威(T)と組み合わせた場合、対処すべき課題やリスクが明確になります。これにより、組織が課題解決やリスク回避のための戦略を策定できます。
  • 複数の要素の総合的な評価
    クロスSWOT分析では、異なる要素を組み合わせることで、より総合的な評価が得られます。これにより、単一の要素だけでなく、複数の要素を考慮して戦略を決定できます。

「強み×機会」と「弱み×脅威」の組み合わせは、自社のポジションや競争優位性を理解し、戦略的な選択肢を見極めるための重要なステップです。これらの分析を通じて、組織は自らの強みを活かし、課題やリスクに対処しつつ、市場の成長と競争力を最大化する戦略を立案することができます。

ポーターの競争力ファイブ・フォース(Porter’s Five Forces)

マイケル・ポーターによって提唱されたポーターの競争力ファイブ・フォースは、業界の競争力を評価するためのフレームワークです。これには、新規参入の脅威、代替品の脅威、顧客の交渉力、サプライヤーの交渉力、既存競合他社との競争が含まれます。

  • 新規参入の脅威(Threat of New Entrants)
    新たな企業が市場に参入する可能性の度合いを評価します。新規参入の脅威が高い場合、既存の企業は新規参入者による競争を受ける可能性が高まります。新規参入を阻止するバリアや障壁がある場合、競争力は高まります。
  • 競合の脅威(Threat of Substitutes)
    代替品や代替サービスが市場に存在する場合、既存の企業はこれらの代替品による競争を受けることになります。競合の脅威が高い場合、顧客は代替品に切り替える可能性が高まり、企業の収益性が低下する恐れがあります。
  • 顧客の交渉力(Bargaining Power of Customers)
    顧客が企業に対して価格や条件などの交渉力を持っているかどうかを評価します。顧客の交渉力が高い場合、企業は価格引き下げやサービスの改善などで顧客を満足させる必要があります。
  • 仕入れ業者の交渉力(Bargaining Power of Suppliers)
    企業が必要とする原材料やサービスを供給する仕入れ業者が、企業に対して価格や供給条件などを押し付けることができるかどうかを評価します。仕入れ業者の交渉力が高い場合、企業は原材料の価格上昇などのリスクに直面する可能性があります。
  • 業界内の競争激化(Intensity of Competitive Rivalry)
    既存の競合他社との競争の激しさを評価します。競争激化が高い場合、価格競争やマーケティング活動の増加など、競争相手との戦略的な差別化が重要になります。

ポーターの競争力ファイブ・フォースは、これらの要素を総合的に評価することで、企業が競争力を獲得し、持続的な成功を達成するための戦略立案に役立ちます。

PESTEL分析

PESTEL分析は、政治(Political)、経済(Economic)、社会(Social)、技術(Technological)、環境(Environmental)、法的(Legal)の要素を分析する手法です。これにより、競合他社の事業環境や市場動向を理解し、自社の戦略に適切に対応することができます。

PESTEL分析は、これらの外部要因を評価し、企業が直面する機会やリスクを理解するために広く用いられています。この分析を通じて、企業は戦略をより効果的に立案し、外部環境の変化に適応して持続的な競争優位性を確保することができます。

  • 政治的要因(Political Factors)
    政治的な要因は、政府や政治機関が企業や産業に対して影響を及ぼす要素を指します。法律、規制、政策、政治の安定性、政府の姿勢などが含まれます。
  • 経済的要因(Economic Factors)
    経済的な要因は、マクロ経済状況が企業に及ぼす影響を指します。経済成長率、インフレーション、金利、為替レート、失業率などが考慮されます。
  • 社会文化的要因(Social and Cultural Factors)
    社会文化的な要因は、社会や文化が企業に与える影響を指します。人口構成、ライフスタイルの変化、人々の価値観、文化的偏見などが含まれます。
  • 技術的要因(Technological Factors)
    技術的な要因は、技術の進化や革新が企業に与える影響を指します。新しい技術の導入、デジタル化、イノベーションなどが考慮されます。
  • 環境的要因(Environmental Factors)
    環境的な要因は、企業の活動や業界が環境に及ぼす影響や、環境問題が企業に与える影響を指します。環境法規制、エネルギー効率、再生可能エネルギーの利用などが含まれます。
  • 法的要因(Legal Factors)
    法的要因は、法律や規制が企業に与える影響を指します。労働法、競争法、知的財産権などが考慮されます。

彼を知り己を知れば百戦殆からず

中国春秋時代の兵法書「孫子」に登場する「彼を知り己を知れば百戦殆からず」は、企業の競争戦略においても重要な考え方です。

孫子は、中国古代・春秋時代の武将・兵法家であり、また彼の著作としての「孫子」を指すこともあります。

この「孫子」は、戦争の思想や戦術を体系的にまとめた兵法書であり、古代中国から現代に至るまで、世界中で多くの人々に読まれ、影響を与えてきました。

彼を知る

「彼を知る」とは、敵の強みや弱み、戦略や動向を把握することです。敵の強みを知ることで、それを克服するための対策を立てることができます。また、敵の戦略や動向を知ることで、それに対抗するための戦略を立てることができます。

ビジネスにおいては、競合他社の強みや弱み、戦略や動向を把握することです。競合他社の強みを理解することで、自社の弱点を補うことができます。また、競合他社の戦略や動向を把握することで、自社の戦略を最適化することができます。

また「彼を知る」とは、敵だけではなく、相手のことを深く理解することです。そのため、顧客を知ることも「彼を知る」という側面があると言えるでしょう。

顧客を知るためには、顧客のニーズや課題を理解することが重要です。顧客のニーズや課題を理解することで、顧客に価値のある商品やサービスを提供することができます。

己を知る

「己を知る」とは、自分の強みや弱み、能力や経験を把握することです。自分の強みを知ることで、それを活かすための努力をすることができます。また、自分の弱みを知ることで、それを克服するための努力をすることができます。

ビジネスにおいては、自社の強みや弱み、経営資源を把握することです。自社の強みを理解することで、競争優位を確立することができます。また、自社の弱みを理解することで、改善の余地を探ることができます。

企業が競争で勝つためには、自社と競合他社、そして顧客についてよく知ることが重要です。これらを深く理解することで、自社にとって最適な戦略を策定することができます。

百戦殆からず

「百戦殆からず(あやうからず)」とは、直訳すると「百回戦っても危険がない」という意味ですが、一般的には「何度戦っても負けない」という意味で使われます。

何回戦っても負けない、というところが特に重要でもあります。「何回戦っても勝つ」のと「負けない、危険がない」のとでは、実は内容が異なります。まともに戦って勝ち目のない戦いであれば、「負けない」ために戦わないという選択もあり得ます。

「何回戦っても勝つ」ためには、圧倒的な力や優位性を必要とします。しかし、そのような状況は現実にはほとんどありません。勝つ事に拘るあまり不利な状況を顧みずに戦えば、自分の資源を消耗してしまい力や優位性が削がれてしまう事があります。こうなると、次の戦いでは負ける危険が増加してしまうこともあるでしょう。

戦略的撤退のように、負けないために戦わないという選択の一つです。例えばビジネスにおいて、ある事業が市場競争力を失ってしまった場合を考えてみましょう。無理に戦って損失を増やすよりも、戦略的撤退を行い資源を別の事業に回すことによって、損失を最小限に抑えることができるでしょう。

Summary

今回の記事では、戦略フレームワークの概要説明にとどめましたが、いずれ具体的な記入例などをご紹介したいと考えております。いずれにしても、分析や戦略策定は何度も繰り返し行い、実践と学習を繰り返します。反復によってフレームワークの活用も慣れ、戦略策定の精度は増していきます。未経験の方は、まずは慣れろの精神で取り組み始める事をおすすめします